パイプオルガンの本

 世界的なパイプオルガン制作者として知られる辻 宏さん(1933~2008)のご著書をご存知でしょうか? 次の2冊がそれです。

  辻 宏『風の歌 パイプオルガンと私』日本基督教団出版局,1988年

  辻 宏『オルガンは歌う 歴史的建造法を求めて』日本キリスト教団出版局,2007年

 前者はお元気な頃、後者は辻さんの遺著です。2冊とも、とても凡人が批評などできる作品ではありません。以下は素人なりのご紹介です。

 現役最古のパイプオルガンはイタリア、ボローニャで1470年代に制作されたものだそうです。

御年540歳ぐらい?ということになります。木と皮と鉛でつくられた古いパイプオルガンはとても寿命が長く、ニカワで組立てられた部品は比較的容易に解体・再組立てできるため、傷みやすい皮製部品を必要に応じて交換すれば何年でも生き続ける楽器であるようです。

現在、,ヨーロッパには300~400歳クラスの現役パイプオルガンがいくつもあるそうです。

また部品に痛みが無ければ、ニカワ自体も数百年以上はもっているようです。

 パイプオルガンは最も古いルネサンス・パイプオルガンから17~18世紀のバロック・パイプオルガン,19世紀のロマンティック・パイプオルガンへと世代交代を重ねてきました。

そして,20世紀に入るとバッハ研究家としても著名な、A. シュヴァイツァー博士の提案でバロック・パイプオルガンへの復興が叫ばれるようになり、ドイツでは「ドイツ・オルガン運動」がおこりました。

 しかし,バロックまでの古いパイプオルガンは生活と信仰に密着し,数百年の試行錯誤を通じてつちかわれ,固く伝えられて来た技術と技能に根差すものでした。

対照的に,伝統を軽んじて進化を重視する現代思想とペアになった「ドイツ・オルガン運動」が生み出した“ネオ・バロック・パイプオルガン”には、機能主義的改造や工学的最適化・材料の純化・均質化・プラスチック化が大幅にとり入れられていました。

このため,“ネオ・バロック”の発声能力は古楽器の声楽的なものから器楽的なものへ,さらには電子オルガン的なそれへと極端に劣化し,それに合わせて,パイプオルガンの演奏技術まで平板なものに変わってしまったそうです。

また,その後,“ネオ・バロック”への反動として現れた“ネオ・ロマンティック・パイプオルガン”も結局は同じで,発声の単調さを“ネオ・バロック”と共有しているそうです。

私たちが講堂などで聴くパイプオルガンは大抵この“ネオ”のいずれかであるので,直ぐに聴き飽きてしまうのも当然だったんですね。

辻さんは バロック・パイプオルガンへの回帰を生涯のお仕事とお定めになり、ヨーロッパ諸国の古いパイプオルガンの修復やその複製品製造といった事業に加え、パイプオルガン制作技術者やパイプオルガン演奏者の教育活動にご尽力になり,最期まで情熱を捧げました。

 真の意味で尊敬に値するお方によるご著書、一度,お読みになってはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

坂上麻紀

坂上麻紀

現在は東灘区にてピアノ教室を主宰の他、ラウンジピアニスト、各種イベント、シニアマンション・病院等での出張演奏にて活動中。神戸女学院大学音楽学部音楽学科ピアノ専攻卒・同音楽専攻科修了。