ジャズトランペットとルイ・アームストロング……自然の耳とジャズの耳で聴けること

金管楽器の中でもトランペットは音出しが難しいですね。音を出すだけならマウスピースの大きなチューバの方が、はるかに楽です。

トランペットの難しいところはインターバル、つまり前後する音高の落差を大きくとりにくいという点にもあります。

つまり、どちらかを活かすと他方が萎えてしまいがちなのです。モダンジャズのトランペッターは速さを見せつけたがりますが、彼らの演奏におけるインターバルは一般に小さく、狭い音域でテロテロ上げ下げしている場合がほとんどです。

孔の小さいマウスピースを使うほど高い音を出しやすくなりますが、重低音は出しにくくなります。逆は逆です。低音が利くマウスピースで高音を絞り出すには唇の威力が必要となります。

元々、ファンファーレのためのラッパであったトランペットを歌う楽器にして見せた人、それがジャズ史上の巨人、ルイ・アームストロング(1901~1971)です。

ルイは小さく吹いてもお腹に響くような重低音を放つことができ、高音を奏でることも自在でした。

彼の演奏は非常に大きなインターバルを自由に操るものでした。重低音と輝くような高音……まるでスタインウェイのフルコンのようなトランペット演奏でした。そして、ルイの演奏は歌うような表情に満ちていました。

良い音を思いのままに繰り出しただけでなく、ルイは革新的な奏法を生み出しました。彼によって開発された奏法があったからこそサックス奏者、コールマン・ホーキンズはスウィング・ジャズからビバップ、つまりモダンジャズへの橋渡しという歴史的役割を演じられることになったのです。ジャス史研究者は:

ゆっくりとした和音進行の上に、2倍の速さで進んでいく即興演奏の方法は、ホーキンズの発明ではない。すでに20年も以前に、ルイ・アームストロングが発展させて、ジャズ・ソロの技法のひとつとして定着していたものである。しかしこのホーキンズのソロの素晴らしさと興奮は、ジャズ好きのアメリカ人の耳を捕え、コールマン・ホーキンズの名前をスウィング独奏者の最前線に押し出すこととなった。

と述べています(Frank Tirro/中嶋恒雄訳『ジャズの歴史』音楽之友社、1993年、264ページ、より)。

そればかりか、ルイの奏法はビバップの直接的先駆者でさえありました。

別の研究者は:

アームストロングの旋律と楽団全体の和声の関係は、実に巧妙なものである。たとえばドッズの旋律が、主として分散和音とその単純な装飾によって作られているのに比べると、アームストロングの旋律は、和声進行に縛られずに独立しており、フレーズも大きく、不協和音の使用にも大胆である。……中略…… 不協和音にもかかわらずアームストロングの旋律は、充分に和声的な調和を保っており、通奏低音にたいして対位的に作られるバッハの旋律のように、終止へと進行して行く。この和声的絶妙さは、たいていのアームストロングの評論では無視されている。しかし、この点こそが、アームストロングや彼の最良の仲間達と、彼らの退屈な模倣者達とを区別する鍵なのである。そしてまた、チャーリー・パーカーのような若い世代の素晴らしい仕事にたいして、はっきりと先駆けている点でもある。と述べています。

(W., Austin, Music in the 20th Centuryからの引用。ティロー『ジャズの歴史』206頁、より。ドッズはクラリネット奏者)。

このような研究がなされたのは録音だけでなく採譜によって正確な分析が可能になってからのことです。

しかし、そのためにはクラシックの和声とは異なるジャズのそれを聴き分けるジャズの耳の鍛錬が不可欠なのです。

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この記事を書いた人

坂上麻紀

坂上麻紀

現在は東灘区にてピアノ教室を主宰の他、ラウンジピアニスト、各種イベント、シニアマンション・病院等での出張演奏にて活動中。神戸女学院大学音楽学部音楽学科ピアノ専攻卒・同音楽専攻科修了。